のたお印の短編集

そして亮二は、それを確認すらせずに走り出ていた。

無音歩行で廊下を走り、駐屯地司令室に一気に踏み込む!

ドアを素早く開け、有無を言わさず跳躍して天井近くで一回転!

「ひっ!」

司令室の席に座っていた男…紅林に圧し掛かり、手にしたアイスピックを振り上げる!

「傭兵部隊『バッドカンパニー』メンバー、紅林 信治で間違いないな」

「く、くそ!田舎者の集落の生き残りが!」

亮二の素性を理解しているのか。

紅林は彼を罵倒した。

「全員皆殺しにしたと思っていたのに!まだ死に損なっている奴がいたとは!手際の悪い真似しやがって!」

その口から、亮二に対する謝罪の言葉が出る事は一切ない。

村を焼き討ちしておきながら。

村人を皆殺しにしておきながら。

悔い改める言葉は終ぞ一度も出なかった。