夜の暗がりを、見上げる。

法外 猛流(ほうがい たける)が目にしているのは、漆黒に染まる闇を照らそうとする街灯だった。

煌々と照らす人工の光。

しかしその光を以ってしても、闇は僅かに破られる程度でしかない。

所詮人間の力など微々たるもの。

如何にその叡智を駆使しようとも、闇に人は敵わぬ。

…その闇の中、蠢く者があった。

鴉。

漆黒の闇に染まって尚、その赤い瞳で猛流を見つめる。

「…久し振りだな」

呟く猛流。

街灯の上にとまるその鴉の嘴には、黒い封筒が咥えられていた。