のたお印の短編集

天軍、悪魔の大軍団共に、その軍勢数百万から数千万。

漆黒の空に、白き翼と黒き翼の兵が入り乱れて乱戦を繰り広げる中。

「ウリエル!」

ラファエルがウリエルのもとに飛来する。

悪魔の大軍団の初撃、回避こそしたものの、ウリエルは左腕に傷を負っていた。

「待ってて、すぐに」

ラファエルは彼の傷に手をかざす。

ラファエルの掌より放たれる、癒しの光。

春の木漏れ日のような暖かなその光は、懐かしき母さえ想起させる。

同時に、悪魔より受けた傷が見る見るうちに癒される。

ラファエルはヘブライ語で『神は癒される』という意味であり、ユダヤ教の伝統で癒しを司るのだ。