のたお印の短編集

赤い竜の頭上、大きな翼を広げて浮遊している異形は、3頭3口6目の容姿を持ち、あらゆる悪の根源を成すものとして恐れられたゾロアスター教の竜『アジ・ダハーカ』。

共に『悪』と呼称される正真正銘の魔物だ。

その邪悪二体が。

「よぅく狙え…」

禍彦の言葉により、大きく顎(あぎと)を開く。

その洞窟のような喉の奥から聞こえてくるのは収束音。

竜達の喉奥で、高熱のエネルギーが圧縮されている音。

「ヨルムンガンド!フェンリル!」

朱鷺姫が叫ぶ。

即座にマスターたる朱鷺姫を守るべく盾となって前に立つ二体。

その二体目掛けて。