引っ込み思案な恋心。-3rd~final~






「カバンだけ置いてくるから、ちょっと待ってて」



「うん」






このやり取り、すごく懐かしい。





付き合い始めの時とか、こうやってまず拓の家に寄って拓が荷物を置いてから、私の家まで付き合ってくれてたんだよね。







風が寒くてマフラーを巻き直していたら、拓が家から出てきて私のカバンを持ってくれた。






「…ほら。手ぇつなご?」



「あ。拓の手、あったかいね」



「俺の手は柚をあっためるためにあるからな〜」



「知ってるよ、それ」






でも、私の手だけじゃないよ。





今日は少し落ち込んでしまったこの心まで温めてくれている。






ついついいつもの拓のセリフに微笑んでいると、拓はそのままつながれた手を制服のポケットに突っ込んだ。






「こーしたら更にあったかくね?」



「そうだね」



「まあ…、どーなるか分かんねえけど、まだ受験シーズンは終わったわけじゃねーよ。落ち込んでる暇があったら、次に向けて頑張らないとな」



「うん。みんなのおかげで勉強する意欲が沸いてきたよ」



「柚もH高受けるんだっけ?」



「あ、うん。一応…」






チャンスは何度もあった方がいいし、もしA高の一般試験を受けるなら、試験慣れしておいた方がいいと思って、私はとりあえずH高校も受けることにした。





もちろん、A高もH高も受かったら、A高を取ると思うけど。






「マサと蘇我と柚…、誰がH高受かるんだろーな」



「みんな頑張ってるもん、受かってほしいね」



「だよな〜」






すると、拓のポケットの中で何か固いものが指に当たったような気がした。





拓…、ポケットの中に何か突っ込んだままにしてたのかな?