「柚…。俺達、来年も一緒にいられるかな?」
「拓?」
「来年の春になったら、嫌でも俺達の進路は決まっちゃうだろ?その時…俺達、笑っていられるかな?」
「…大丈夫だよ。拓、すごく頑張ってるから」
「俺、ホントはけっこー不安なんだよな。村尾ちゃんからはこの前の面談で『絶対大丈夫』なんて太鼓判押してもらったけど、万が一A高落ちたら…って」
「村尾先生がそう言ってるなら、大丈夫だよ。…私だって、作文は何とかなっても、面接に手こずってるし」
アナウンスはもう一度やりたいと思うのに、誰かの前に出て何か話せとか言われると、私はやっぱり固まってしまう。
『面接』っていう独特な雰囲気…
長机にズラッと並ぶ先生達…
練習をしていて、緊張に飲み込まれそうになったことが何度もあった。
自分のこと…A高への思い…ちゃんと説明できないと受かるわけないって分かってるのに、言葉がちゃんと出てこないんだ。
友達の前ではいくら話せても、知らない人の前になるとやっぱり話せなくなってしまうこんな性格…、面接にはすごく不利だって思い知らされる。
「まあ確かに、柚が知らない大人の前でペラペラ語る様子なんてイメージできないけどさ…。でも、A高で放送部入ってアナウンスしたいんだろ?その気持ちをしっかり持っていれば、高校の先生にも伝わると思うけど…柚の思い」
「最近面接の雰囲気にもだいぶ慣れてきたから。もうちょっと頑張ってみるよ」
私がそう言うと、拓は微笑みながら私の身体を抱き締めてくれた。
拓の身体、すごくあったかいよ…。
拓だって不安を抱えながらも部活引退せずに頑張ってる。
私も頑張らないわけにはいかないから。
…拓と同じ未来を目指すためにも。
「柚…」
私も拓の背中に手を回したら、私の顔に拓の顔が近付いてきた。
ドキドキする…
心臓の鼓動が、少し速くなる。

