「リストバンドか。いーな、コレ!高校入って陸上の大会あったら付けよーかな」
「ホントに?」
「おう、付ける付ける。なんてったって、柚の想いが入ってるからな!」
拓にそう言われると照れるんだけど……
拓へのプレゼントに選んだのは、緑色のリストバンド。
今でも鮮明に覚えてる…
9月…私達の最後の体育祭、最後のリレー。
拓は私の緑色のハチマキを巻いてリレーに出場した。
私の想いが拓に宿ったのかどうかは分からないけど、拓は念願の『リレーで1位を取る』という目標を達成できたんだ。
さすがに陸上の大会ではハチマキを巻いて走ることはほとんどない。
だけど、私はあの時見た拓の一生懸命な走りを忘れたくなかった。
だから…敢えて緑色のリストバンドを選んだんだ。
「あー…。でも俺は用意してないんだよな。忙しかったし、小遣いもほとんど無かったし」
「いいよ。拓からのプレゼントはこのブレスレットで充分だから。私からは拓に何もあげてなかったし」
「柚それすげー付けてくれてるよな?見る度に嬉しいんだけど」
もちろん、今日も『付き合って1年記念』に拓からもらったシルバーのブレスレットを左腕に付けてきている。
私が左腕を少し上げると、拓はまた私の手を握ってきた。
ふと拓の顔を見上げると、拓は嬉しそうな顔の中に真剣な目をしていた。

