私は拓と同じ高校に通いたいから、A高に決めた。
だから、先輩と同じ高校に通いたいななっぺの気持ちはすごくよく分かる。
なのに、そんなにあっさり志望校を変えちゃってもいいのかな…?
「今だって学校は違うけど何とかやってこれたんだから、大丈夫だよ。ちゃんと気持ちが通じ合っていれば…」
「じゃあ、A高に変えるのか?」
「うん…、一応親と先生と先輩に相談してから決めると思うけど。A高にしたら、瀬川や柚ともまた同じになるね」
そうやって静かに微笑んだななっぺの表情は、さっきよりも明るくなったような気がした。
そんなななっぺを見て、私もニッコリと微笑み返した。
「あっ、俺追加のジュース取りに行こうとしてたんだった!お前らも勉強しろよ。A高はそんな甘くないぞー」
「スポーツ推薦ほぼ決定の瀬川に言われたくないし。柚、この問題教えてもらえる?とりあえずヒントだけ」
「あっ、うん。この問題複雑だから難しいよね。えーーっと…」
私はもう一度ななっぺから指差された問題を慌てて目で追った。
拓は少し倉本くんとじゃれ合った後、ジュースを取りに部屋を出て行った。
でも…
こういう恋の形もあるんだ…って、私は別の意味で勉強していた。
いつも一緒にいることだけが恋人達の全てじゃないんだ。
お互いの未来を応援して…
時には一緒に寄り添いたい気持ちを我慢して、夢のために相手と離れたり。
今は同じ学校で同じクラスにいる拓だけど、いつかはそんな日も来てしまうのかな…?
だけど、まだ考えることではないかな…。
私は拓と同じ高校に入れるように今はただ頑張るだけだから。
勉強会に来ている一人一人の真剣な表情を見ていると、頑張ってるのは私だけじゃないって思い知らされる。
みんな、同じように頑張っている。
だからこそ…、気を引き締めなくちゃ。
拓との未来に向かって。
――
―――――

