「ねえ、倉本くん。この問題なんだけど…もう解いた?解き方、分かる?」
「杉田に聞いたらいーだろ。何でわざわざ俺に聞くんだよ?」
「いや、同じ高校受けるつもりなら、一回過去問解いてるかな…と思って。勉強の邪魔してるなら柚に聞くけど……」
「………それなら一度解いてるから分かるけど」
2学期の中間テスト前から再び勉強会に加わった倉本くんは、同じH高校を受ける予定のあーさんからたびたび頼りにされているみたい。
倉本くんも一度はああやってあーさんを突っぱねようとするんだけど、結局は教えてるんだよね。
私は負担が少し減って助かってるんだけど、倉本くんの『元カノ』となってしまったあかねちゃんは……
「あーさん、まだH高受ける予定なの?やっぱりあーさんがH高って、イメージじゃないんだけどー」
「…あかねちゃん…私、自分が一番H高のイメージにそぐわないって分かってるから…」
「親を説得するのも大変だねぇー。うちの親なんてかなりテキトーだけど。…まっ、倉本もそこそこ分かりやすく教えてくれるからどんどん聞いちゃいなよ〜」
「『そこそこ』って何だよ、馬場」
「やっぱり柚の方が分かりやすいってコト〜」
あかねちゃんが倉本くんに向かって満面の笑みでそう言うと、言われた倉本くんは少しムッとした顔をしたけど、すぐにあーさんの方に向き直って「これは…」と問題の解説を始めた。
今は別れてしまったこの二人が同じ空間にいることで、勉強会の雰囲気がどうなることかと初めはみんなで不安だったんだけど、二人とも上手く吹っ切れていたみたいで、ケンカして別れる前と同じような会話をするようになった。
今ではホントに「この二人、一旦は付き合って別れたのかな?」って思わず疑ってしまうほど、元通りの仲になっている。
…もちろん、ヨリを戻したわけではないみたいだけど。

