こうやって横で拓の応援を聞いていると、ホントに拓はすごいなと思う。
テントの応援する声が足りなかったら、大声で「みんなもっと応援しろー」ってクラスをまとめてる。
それまで雑談とかしてた人達も、拓の声が飛ぶと応援の方に集中しちゃうもんね。
改めて、拓の影響力は違うなあ…なんて感心してしまう。
「蘇我はよく頑張ったよな〜。2位かぁ。マサはまた3位だし」
「あーさんは一生懸命練習してたから。でも倉本くんも一時4位だったのに最後抜いてすごかったじゃん」
「争いが低レベルすぎんだよ、マサは」
「辛口だね…。さすが陸上部」
拓の酷評に苦笑いしてたら、「そーいやそろそろ長縄じゃね?」と拓に言われて、私は持っていたプログラム表に目を通した。
「あ、ホントだ。あんまり自信ないんだよね。練習もうちょっとしたかったんだけど…」
「あんなの縄が来たら飛ぶだけだろ?楽勝楽勝」
「私のせいで引っかかっちゃったらどうしよう…」
「やる前からそんなこと考えんなよ」
そう言いながら、拓は自分の頭に巻いていたハチマキを外して、私の手の上に置いてきた。
「…え?」
「柚の巻いてるハチマキ、預かっていい?別に同じ色なんだから、誰にも分かんねえだろ」
「うん…」
3年1組のハチマキは、緑色。
私は自分の巻いていた緑色のハチマキを、髪形が崩れないように外して、それを拓に渡した。
そして、拓が手渡してくれたハチマキを自分の頭に巻いた。
「俺の気合い入ってるから、絶対大丈夫!思い切って飛んでこいよ」
「ありがとう」
何か…、ただの同じ緑色のハチマキなのに、拓のハチマキだって思うと、勇気が出てきた気がする。
今日は一日中体操服だから、拓からもらったシルバーのブレスレットも教室のカバンの中に眠ったままだったし…
無意識にだけど、拓のパワーがなくてちょっと不安だったのかも。
拓に励まされてテントを出ると、障害物競争終わりのあーさんに会った。

