―――――
――
スタートの合図の空砲と共に、トラックに横一列に並んだ男子達が一斉に走り出した。
その中でも…、拓のスタートダッシュはやっぱり群を抜いて速い。
「拓ーっ!頑張って!!」
体育祭の競技が始まった。
今は序盤の競技の徒競争。
今年は拓と同じクラスだし、堂々と拓のことを応援できる。
私はあーさんとクラスの応援テントの前列を陣取って、声を出して拓を応援した。
真剣な表情…
大きなストライド…
本当に、「綺麗」と言いたくなるくらいの走り。
その間にも拓はぐんぐんスピードをつけて、他に走っていた4人の男子とは大きすぎるくらいの差をつけ、あっという間にゴールテープを切っていた。
「相変わらずあっという間だね、瀬川くん。応援する暇も与えないじゃん」
「拓…、カッコ良かった…」
「しかも柚も相変わらずノロケだしー」
「え?何?あーさん」
「………。瀬川くんが速いねって話」
しばらく拓の走りを頭の中でリピートしていた私は、隣にいたあーさんの存在を少し忘れそうになっていた。
「いけない」と思いながら謝ると…
「でもそんな柚がいいと思うよ。私はそろそろ障害物だから、並んでくるね」
「あ…、そっか。拓と応援してるね」
「ありがとう。行ってくるねー」
…何かあーさん、最近私の扱いが分かってきてるかの言動が多いような…。
さっきのだって、普通なら怒ってるところ…だよね?
そんなことを思っていると、徒競争終わりの拓がテントに戻ってきて、私の隣に座った。

