引っ込み思案な恋心。-3rd~final~


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スタートの合図の空砲と共に、トラックに横一列に並んだ男子達が一斉に走り出した。





その中でも…、拓のスタートダッシュはやっぱり群を抜いて速い。






「拓ーっ!頑張って!!」






体育祭の競技が始まった。




今は序盤の競技の徒競争。





今年は拓と同じクラスだし、堂々と拓のことを応援できる。





私はあーさんとクラスの応援テントの前列を陣取って、声を出して拓を応援した。






真剣な表情…



大きなストライド…





本当に、「綺麗」と言いたくなるくらいの走り。






その間にも拓はぐんぐんスピードをつけて、他に走っていた4人の男子とは大きすぎるくらいの差をつけ、あっという間にゴールテープを切っていた。






「相変わらずあっという間だね、瀬川くん。応援する暇も与えないじゃん」



「拓…、カッコ良かった…」



「しかも柚も相変わらずノロケだしー」



「え?何?あーさん」



「………。瀬川くんが速いねって話」






しばらく拓の走りを頭の中でリピートしていた私は、隣にいたあーさんの存在を少し忘れそうになっていた。





「いけない」と思いながら謝ると…






「でもそんな柚がいいと思うよ。私はそろそろ障害物だから、並んでくるね」



「あ…、そっか。拓と応援してるね」



「ありがとう。行ってくるねー」






…何かあーさん、最近私の扱いが分かってきてるかの言動が多いような…。





さっきのだって、普通なら怒ってるところ…だよね?







そんなことを思っていると、徒競争終わりの拓がテントに戻ってきて、私の隣に座った。