「私最近ななっぺと帰ってるでしょ?やっぱり合唱部のこととかよく聞くんだ。合唱コンクールの時は合唱も強制だったし、実行委員してて全然面白いなんて思わなかったけど、ななっぺの話を聞いてると、すごく楽しそう。私ももう少し早くななっぺと仲良くなって合唱部に入ったら良かったな…とか思うよ」
「もう合唱部も引退間近だもんね。でもななっぺと仲良くやってるみたいで良かったよ」
「高校生の彼氏がいるんだね。モテるウワサは聞いてたけど、さすが…って思っちゃった」
「うん。安森先輩って言って、ななっぺとは合唱部の先輩に当たるんだって。一回見たことあるけど、すごく優しそうな人だった」
「私も写メ見せてもらったよ。仲が良さそうだった〜」
あーさんとななっぺの彼氏の話で盛り上がっていると、そろそろ拓の走る番が近いのか、拓が腕のストレッチをしながらトラックのスタートラインの近くまで歩いてきていた。
いつも体育の授業なんかで見慣れている体操服やジャージじゃなくて、うちの中学の校名がローマ字で大きく書かれた、陸上部専用の上着を脱いだ拓が、不意にこっちを向いてきた。
「…あっ。瀬川くんこっち向いたね。次が出番なのかな?」
「そうみたい。応援しなくちゃね」
私が小さく拓に手を振ると、拓もそれに気付いて右手を挙げてくれた。
「あんなに遠くでも、瀬川くんには分かるんだね。さすが1年半くらい付き合ってるだけのことはあるねぇ」
「ちょ…っ、照れるよ、あーさん!」

