いつもの拓の口癖だった、『俺の手は柚をあっためるためにある』って言葉。
そんなことを言われてばかりだったけど、ふと思う。
私の手も、拓をあっためるためにあるのかな…って。
思ったことを口に出したら、拓は一瞬驚いた顔をしたけど、次に嬉しそうに微笑みながら軽くキスをしてくれた。
「当たり前だろ!」
唇が離れた後、拓がそう言って、手がゆっくりと離れた…と思ったら、頭をくしゃくしゃになでられた。
「またメールする。柚は勉強するんだろ?頑張れよ」
「拓も、今日教えた所ちゃんと覚えておいてね」
「…また聞くかも」
そんな拓の言葉に笑ったら、拓も笑いながら手を振って「じゃーな」と背を向けた。
私はくしゃくしゃにされた髪の毛を直しながら、見えなくなるまで拓の後ろ姿を見送った。
…こんな私でも、拓のこと温められてるんだ…。
まだ拓の欲望に応えられてないのに、それでも拓は私のこと……
久しぶりに拓と触れられて、
キスできたことが嬉しくて。
私は拓にさっきキスされた唇をそっと指でなぞって、少し残った拓の温もりを確認しながら玄関のドアを開けた。
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