でも、あの夏あの人は帰ってこなかった。 離婚届と置手紙と俺たちをおいて、 あの2人のもとへ消えて行った。 置手紙には、 “大切な人ができました” とだけ書いてあった。 お母さんは涙1つも流さずに、 ただただ茫然としていた。 シーンとした部屋に、 蛇口からこぼれる雫の音だけが聞こえる。