三毛猫レクイエム。


「あき」
「なあ、真子」

 私を振り返りもせず、あきが私に話しかけた。

「俺、ずっとこのまま病院にいるのかな?」

 きっと、あきは弱気になっているんだと思う。外泊許可が下りなかったから。

「あき、今回が駄目でも、また次があるよ」
「……頑張っても、苦痛乗り越えても……先が見えない」

 私に背中を見せているから、あきの表情はうかがい知れない。だけど、あきが初めて漏らした弱音は、私の胸を突き刺した。
 私は、あきを背中から抱きしめた。

「あき、どこにいても、あきはあきだよ」
「真子……」
「病院にいたって、テレビに出てたって、ライヴで歌ってたって、私にとって、あきはあき」

 あきの身体は、震えていた。

「あき、私がいつもそばにいるから。あきの苦痛を、一緒に背負うから。私に何もできないけど……でも、あきを笑顔にするから」

 あき、振り返らないで。
 私は、今のあきの前では泣きたくないの。

「一緒に頑張ろうね」
「真子……」

 涙声になってても、私はあきを抱きしめて放さなかった。泣いているのを、見られたくなかったから。
 震えているあきが、泣いているのかはわからなかったけど、私達はしばらくそのままでいた。