私が病室に行くと、部屋の前におばさんが立っていた。
「どうしたんですか?」
「あら、真子ちゃん……」
おばさんは私を見て微笑みかけた。そして口元に人差し指を当てて、手招きをした。私が近づくと、
「あ……」
あきの、歌声が聞こえてきた。ライヴでの声とは比べ物にならないくらい弱くて切ない声。時折掠れて、声が出ていない。
「外泊許可がね、下りなかったのよ」
「え」
おばさんは辛そうに、
「明良は、頑張ってるのに……頑張ってもどうしようもならないことがあるのね」
「……おばさん……」
そう言った。おばさんの目には、涙が浮かんでいた。
「できることなら、代わってあげたい……。私にできることは、何もない……」
私は込みあがってくる涙をこらえて、静かに泣いているおばさんを抱きしめた。
「真子ちゃん、明良のそばにいてくれてありがとう」
「でも、私にできることも……」
「真子ちゃんがいるだけで、明良は生きようとしてくれているから。真子ちゃん、本当にありがとう……」
そうお礼を言うおばさんに、私はいたたまれなくなった。
腹を痛めて産んだ息子が、病気で辛い目にあっている。きっと、私が想像できないくらい、辛い思いをしているに違いない。
「……真子ちゃん、私、今日は帰るわ。明良のこと、お願い」
「……わかりました」
おばさんが去っていったのを見計らって、私は病室に入った。
「あき?」
私が部屋に入ったとき、あきは窓の外を見ていた。いつもは私が声をかければすぐに反応するのに、今日は私を振り返りもしない。


