「あの、これ買ってきたの。使って」
「うん?」
それは、黒いニットの帽子だった。
「前、頭が寒いってメールしてくれたから」
私の言葉に、あきは目を細めた。そして早速その帽子をかぶった。
「ありがとう」
そして、うわーっと悶えながら、
「めちゃくちゃキスしてぇ」
と呟いた。
「でも、なんか病気移しちゃったら怖いよ……」
「いいじゃん」
「やだよ。私のせいであきが酷い目に遇ったら、私泣いちゃうよ。風邪でも命取りなのに……」
本当は、今にも泣きそう。だけど、あきの前では極力明るく振る舞うと自分に誓っていた。
本当は辛いはずのあきを、笑顔にしてあげるために、私が笑顔でいないでどうするんだ。
「身体、痛くない?」
「んー、今日はまだ調子いいけど、結構痛い。頭とか、腹が痛い」
「そっか。代わってあげたいよ」
私がそう言うと、あきは怒ったように、
「真子がこんな目にあうなんて、俺が耐えられない」
そう言った。
ねえ、あき。同じことを、私も思っているんだよ。
あきがこんな目にあってるの、本当は耐えられない。
だけど、お願いだから乗り越えて欲しい。
そして、また普通の生活ができるようになって欲しいの。
「口内炎とか、馬鹿になんないな! めちゃくちゃ痛いの。しゃべれねぇし、食えないし。熱出ると、意識朦朧だし」
「あき、すっごく頑張ってるね」
文句を言うという感じではなく、面白おかしくこんなことがあったと話すあき。その手を握りながら、私はあきの話を聞いていた。


