三毛猫レクイエム。


 白血病自体にいろいろな種類があり、その治療にもたくさんの種類があるということを、あきが白血病になってから、調べて知った。
 調べる前は、てっきり骨髄移植しか方法がないと思っていたのだが、違うらしい。

 あきの化学療法が始まってしばらく経つ。
 化学療法とは、抗癌剤を投与する治療で、ひどい副作用がある。あきも、治療が始まって五日ほどが経ってから、髪の毛が抜け始めたらしい。
 アパートの部屋にいるときに、あきから髪が抜けたよという、枕にごっそりと抜けた髪の写真つきのメールをもらったときには、一人で泣いてしまった。本当は辛いはずなのに、なんでもないことのように言うあきが、強くてまぶしかった。

 脱毛だけではなく、十日以上にも及ぶ抗癌剤の投与のあと、四十度近い高熱が出たり、酷い下痢や吐き気もしている。私にあまりそういう姿を見せたくないだろうと思って、メールのやり取りで我慢していた。

 本当は、今すぐにでも会って、抱きしめてあげたかった。
 たった一人で頑張っているあきを、助けてあげたかった。

 非力な私ができることは、ただあきが良くなるようにと、祈ることだけだった。


 それからしばらくして、私はあきに会いに病院に行くことにした。家を出る前に、シャワーを浴びて、洗い立ての服を着て、身体を清潔にする。
 白血球の数が少なく、抗癌剤の影響もあって、極端に抵抗力の落ちているあきの身体には、健康な人にはなんでもないような些細な菌も命取りだ。極力、菌を持ち込まないように、気を使わなきゃいけない。
 菌といえば、食べ物や花も持っていってはいけない。調理されてから二時間も経てば、食べ物は菌だらけになるらしい。そして、あきは食事の制限も受けているんだ。


 病室に入る前、私は手の消毒をする。念のために、肘まで念入りに消毒した。

「あき?」

 病室に入ると、あきがこっちを向いた。他の患者さんの邪魔にならないように、私はそっとあきのベッドに移動する。

「真子、会いたかった」

 もともと掠れていたのに、さらに掠れた声であきが微笑む。大分調子がいいみたいで安心して、私はベッドの隣にあった椅子に腰を下ろした。
 髪の毛だけでなく眉毛や睫毛も抜けてしまったあき。

「睫毛ないと目にゴミ入るんだな! 存在感薄いけど、結構仕事してたんだな。なくなって初めて知ったよ」

 そんなことを、笑いながら言うあきに、私はあるものを差し出した。