三毛猫レクイエム。


「てっきりあの週刊誌に載ってたの、事実かと思ってた」

 私は曖昧に言葉を濁す。

「あ、名前、なんていうの?」
「姫木真子です」
「へえ、可愛い名前だね」

 そう言って、翔が笑う。その口元から八重歯が覗いて見えた。

「しかし、俺のファン取るとか、TAKIに後で文句言ってやらないと」
「え……」
「冗談だよ」

 私は笑って、

「翔の出待ちしてたときに、あきと初めて会ったんですよ」
「まじで?」
「はい」

 翔は悔しそうに、顔を歪めた。

「うわ、俺って大きな獲物逃した気分」
「何言ってるんですか」

 冗談めかして言う翔がおもしろくて、私達は盛り上がっていた。

「あ」

 途中で、翔がまずいという顔をした。どうしたのかと思って振り返ると、あきと目が合った。
 スタッフやメンバーに囲まれながら、無表情で私達を見ていたあきは、すっと目をそらした。

「っ……」

 翔が困ったように頬を掻いて、

「やっぱ、一緒にいるのまずいかな」

 と、私に聞いてきた。でも、私は首を横に振って、

「別に、やましいことがあるわけじゃないし。いいでしょ」
「んー、真子ちゃんがそう言うんならいいけど……」

 私の言葉に、翔はちょっと不安そうに、

「あとで喧嘩になっても知らないよ」
「あきだって、週刊誌に載るくらいのことやってるじゃないですか」
「それもそうだな」

 しばらくして打ち上げがお開きになった頃、あきがまっすぐ私のところへやってきた。

「帰るぞ」
「え、でも……」

 他のメンバーは場所を変えて飲みに行く様子。だけど、あきはむっとして、

「もう、帰ろう」
「わかった」

 その言葉に、私は素直に頷いた。