「きっと今でも、タキは真子さんのこと見守ってる」
「……そうかな?」
そうだとしたら、きっとあきはヒロにヤキモチを焼いているだろう。
私は涙をぬぐった。
「ヒロ、気をつけてね」
「ん?」
「あき、ヤキモチ焼いて、ヒロの夢に出てくるかもしれない」
「げっ」
私の言葉に、ヒロは顔をしかめた。
「そんな怖いこと言ってくれるなよ」
「ふふ、でも、知らないよ」
真っ赤な目で笑う私を、ヨシが見上げていた。
それから、何度かヒロと会った。ヨシと一緒だったり、そうじゃなかったり。
ヒロと会うときは、決まって、私の知らないあきの話をしてくれた。TAKIだったときのあき。ヴォーカリストとしてのあき。
付き合う前の期間を入れれば、四年以上一緒にいたのに、私も知らなかったことがあったんだと思い知らされた。
そして、それを知ることができて、嬉しかった。
「ただいま」
今日は仕事の後、ヒロに誘われて一緒に食事をした。そして送ってもらって帰ってきた。
ため息をついて、ソファにダイブをする。
最近、山里先輩にも少し明るくなったと言われた。私にはそれがいいことなのかどうかはわからない。
だけど、変に落ち込んでいるよりは、他の人に心配をかけなくて済むからいいかと思った。
疲れた目を休ませるように、目を閉じる。
「……っ!」
だけど、私ははっとして飛び上がった。
〝今、何が見えた……?〟
心臓が、異常な速さで脈を刻む。
「……ヒロ……?」
目を閉じたとき見えたのは、ヒロの笑顔だった。
「嘘だ……」
私は動揺していた。どうしようもないくらいに、動揺していた。
「あき……っ」
いつまでも色褪せないで、目を閉じればそこにいたあき。頭にこびりついて消えなかったあき。
なのに、どうして、ヒロの笑顔が思い浮かんだのだろう。
身体が、勝手に震えだした。


