三毛猫レクイエム。


 それは、特別な権利なのかもしれない。

 多くの人が、TAKIに近づきたいと思っているだろう。もしかしたらTAKIの彼女になりたいと願っているファンもいるのかもしれない。
 私には、TAKIの素顔を知る権利が与えられて、そして素顔のあきという存在と一緒にいられる権利を与えられた。

 これからも、ずっと。

「きっと、TAKIが有名になるだけ増えていくんだろうね」
「かもな」

 私はあきの左手に触れた。

「あき、私の前ではずっとあきでいてね」
「当たり前だろ」

 そうやって微笑みあって、絆を確かめ合った私達。

 未来を信じて疑わず、ただただ幸せだった日々。


 あの日夢見ていた未来は、永遠に訪れることはなかった。



「明良、真子ちゃんが来てくれたよ」

 その部屋に入る前に、私は深呼吸をする必要があった。息を整えて、私は遺影に向かった。黒い枠の中のあきは、いつものように笑っていた。

「それじゃあ、私はリビングにいるから」

 おばさんが気を利かせて、部屋から出て行った。扉が閉まるのを見送ってから、私はその場に座り込んだ。

「……あき、そっちはどう?」

 遺影に語りかけながら、私はそっと指輪に触れた。どうしても、外せないでいる指輪に。

「今日もまた、あきへの贈り物が増えたよ」

 もう、あきはいないのに。

「あき、さっきヒロに会ったんだ。あきが拾ったっていう猫がね、うちに来たんだよ」

 遺影のあきが、笑顔で私の話を聞いてくれているような気がした。