三毛猫レクイエム。



 “Cat‘s Tail”のメジャーデビュー初CDは、自分のことだと思いながら聞くと、恥ずかしくなってしまうけれど、あきの歌声に息吹を与えられた歌詞は、とても素敵で、あきの私への愛が感じられた。

♪ どんな辛いことも 君となら乗り越えられる だから一生 手をつないで
  ささいな幸せに涙する君 愛おしくて仕方がないから
  泣き虫な君の笑顔に送りたい 溢れ続ける I Love You

 大好きな人の痺れるような声で歌われたロック調のラブソングは、私の宝物になった。



「あきは、嘘つき……」
「うん?」

 震える声で、誰に話しかけるでもなく呟いた私の言葉に、ヒロは耳を傾けた。

「一生、手をつないでって、言ってたのに……」

 『AINOUTA』の歌詞にもあったけれど、あきはあの頃、口癖のように言っていたんだ。

 一生、真子と一緒にいたい。手をつないで、一緒に歩いていきたい、って。

「あきの“一生”は、私と一緒だったけど、私の“一生”には、もうあきがいないなんて、ずるい……」

 ヒロは、少しだけ躊躇ってから、だけど私の背中をなでてくれた。

「本当に、ずるい奴だな、タキは……」
「うん」


 でも、本当はちゃんとわかってるんだ。

 一番悔しかったのは、あきなんだってこと。
 もっと長生きしたかったと思う。もっと大好きな歌を歌っていたかったと思う。うぬぼれかも知れないけど、もっと私と一緒にいたかったと思う。
 それを全部、諦めなくちゃいけなかったあき。
 歌も、私も、自分の命も。
 どれだけ辛かったのかは、一番近くにいた私がちゃんとわかってる。