私が初めてあきと会ったときは、まだ音源も出していなかった“Cat‘s Tail”。
あれから一年で、急成長した。それは、あきが、メンバーが、音楽に真剣に打ち込んでいて、努力をした結果。
「真子、泣いてんの?」
「な、なんでだろ、凄く嬉しくて、泣けてきた」
本当は、少し不安だったのかもしれない。
メジャーデビューをするというTAKI。そうすると、あきが私から離れていってしまうような、そんな不安を感じていたのかもしれない。
「馬鹿真子」
「ばっ、馬鹿って何!」
泣いている私に、あきが笑いながら、
「俺が真子から離れるとか思ってるんだろ」
私の頬を引っ張った。
「っ」
「本当に、馬鹿だな。俺が真子から離れるわけないだろう」
それでも不安がぬぐえない私を、あきは自分のひざの上に乗せた。
「ちゃんと食ってる?真子軽すぎ」
「標準だよ! あきが力持ちすぎるの」
あきはくすくす笑って、私の耳元で囁いた。
「不安になんかなるな。俺まで不安になるから」
「あき……」
私の頭をなでて、あきはそっとキスをした。
「メジャーデビューの曲は、真子のための曲だから」
「え」
「AINOUTA、CD出るまでのお楽しみ」
悪戯っ子みたいに笑うあきは、年上なのに子供みたい。だけど、しっかりと私を抱きしめる包容力に、私はいつも凄く安心できた。


