三毛猫レクイエム。


「やっぱ、タキいないと、調子狂う」
「あきのことだから、いなくなったことが冗談なんじゃないかって思っちゃうの。また何かの悪戯なんじゃないかって」

 ヒロは頷いて、

「そう、わかる。あいつ悪戯好きだったからさ、今にいきなり家に来て、練習始めるとか言い出しそうで」

 そう言いながら笑った。私もつられて笑う。

「何度も、忘れたほうが良いって言われたの。でも、無理。私あきのこと忘れるなんてできないよ。今でもあきの笑顔が頭にこびりついて離れないもん」

 みゃあ

 ヨシが小さく鳴いて、私を見た。あきと同じ色の瞳で。ヒロと私が、同時にヨシを見る。

「……変って思われるかもしれないけどさ」

 ヒロが、躊躇いながらも私に話しかける。

「俺、ヨシ見てると、タキ思い出すんだよな」

 私は驚いて、ヒロを見た。

「なんでだろう、なんか仕草とか」

 身体が勝手に震えだす。

「……目の……」
「うん?」

 私は、少しかすれる声で、

「目の色が、あきと同じなの」

 そう言った。