「こっち」

 ヒロが連れて来てくれたのは、小さなライヴスタジオだった。

「え?」

 不思議に思って、私は首を傾げる。そんな私を見て、ヒロが笑った。

「真子、表から入って。わかるだろ?」
「え、うん」

 ここには前に来たことがある。ヒロは私にヨシを抱かせると、関係者の入り口のある方へと行ってしまった。
 困惑しながら、私は表へと回る。入り口には、男の人がいた。

「え?」
「お久しぶりです」

 その人のことを、私は知っている。“Cat’s Tail”のマネージャーをしていた、高坂さんだ。あきの葬儀でも見かけた。

「お久しぶりです……」

 顔いっぱいに疑問符を浮かべる私を、高坂さんが中へと招きいれた。

「さ、入ってください」
「えっ、でも……?」

 半ば強引に、ライヴ会場に入れられた。扉を閉められると、真っ暗になる。

「え……?」

 みゃう

 戸惑う私がヨシをしっかりと抱きしめた瞬間、ぱっとステージに照明が当たった。

「っ!」

 突然の光に目を細めた私。光に慣れてきたとき、視界に入ってきたのは、ベースを構えたヒロの姿だった。