三毛猫レクイエム。


「真子ちゃん、これ」
「……?」

 目の前に差し出されたのは、鍵の付いている日記帳らしきものだった。見覚えのないそれに、私は首を傾げる。
 おばさんは、そっと私の肩に触れた。

「これはね、明良の日記なの」
「え……っ?」

 差し出された日記を、私は呆然と見つめた。



 処置が終わったあきは、蝋人形みたいだった。
 冷たくなって、棺の中で眠っているあきは、ぴくりとも動かない。

「あき……目、開けてよ」

 話しかけても、反応しない。
 だって、あきは死んでしまっているのだから。

 不思議と、涙は出てこなかった。


 人気ロックバンドのヴォーカリストであるTAKIの死は、日本中に衝撃を与えた。あきが白血病で闘病中だったことも伏せられていたから、なおさらだ。
 通夜と告別式、そして葬儀の日程が決められる。身内だけで行うには、TAKIの名前は大きすぎた。
 事務所の計らいで、多くの人が参列できるような会場が用意された。

 怒涛のような日々に、私はただ抜け殻のようになっていた。

「真子ちゃん……」

 会場の隅でぽつんと座っていた私に、喪服姿のテツが声をかけた。私は、視線を向けるだけで答える。
 テツは沈痛な面持ちで、今にもこぼれそうな涙を堪えているようだった。

「ほんと、信じられねぇ……」
「……くっ」

 泣き声が聞こえて、そちらに視線を向けると、ユキが涙を流していた。うつむいて、唇をかみ締めながら。