三毛猫レクイエム。


「あきは、私がいるから死なないよ」

 私の言葉に、あきが少し目を見張って私を見た。

「あきは、私のことが大好きなんだから、置いてなんかいけないでしょう?」

 私の言葉を聞いたあきは、しばらく沈黙して、息を吐いた。

「……そうだな」
「だから、一緒に頑張ろうね」

 私は精一杯の笑顔でそう言って、病室を出た。
 そして病室を出た瞬間、涙が溢れ出した。

 運命は、意地悪だ。
 どうして、あきだったんだろう。
 どうしてあきがこんな目に遇わなくちゃいけないんだろう。
 いったい、あきが何をしたというんだ。

「あき……っ」

 あき、頑張って。
 お願いだから、そんな今にも死んでしまいそうな顔をしないで。

 私の心の中で、あきの死への恐怖が色濃くなってきたのは、この頃からだった。
 それは、あきが自分の死を意識し始めたせいかもしれない。
 心のどこかで、生きることを諦めてしまっているせいかもしれない。

 酷く、あきを遠く感じた。
 いつも一緒にいるのに、すぐにでもいなくなってしまいそうな気がした。

 怖くて、たまらないのに、その不安を押し隠して、あきの前で笑顔を作る。
 あきに頑張って欲しいから。あきに生きて欲しいから。
 私は今にも泣いてしまいそうな自分を叱責して、あきに笑顔を見せるんだ。



 あきに本でも買おうと思って病院を出ると、明菜ちゃんがいた。

「明菜ちゃん?」

 とっくに帰ったかと思っていたのに、明菜ちゃんは蒼白の面持ちであきの病室のある方を見つめていた。

「真子姉……っ」

 私を見とめた瞬間、明菜ちゃんの目から大粒の涙がこぼれた。そして、泣き出してしまう。
 私は慌てて明菜ちゃんの元へと向かう。