「……ヨシ、か」

 よしは、あきの名前の半分。同じ目の色をしてるあきとヨシ。

「あき、私に会いに来てくれたの?」

 そんなことはないと頭ではわかっている。死んだ者は帰ってこない。死んだ者には会えっこない。
 何度も、何度も思い知らされている。あきは、死んでしまったんだって事。

「あき……っ」

 みゃぁ

 それでも、永遠に失われた温もりが私の元に戻ってきたような錯覚を覚えて、私はヨシを抱きしめた。

 愛しい人、私は今でもあきの笑顔を鮮明に思い出せる。
 あきのいない一年は、長いようであっという間だった。
 深い緑の瞳に見つめられたことも、細長い指で触れてくれたことも、低く甘い声で囁いてくれたことも、何もかもを思い出せる。

 前を向いて歩いていくんだぞ。

 死期を悟っていたあきの言葉の意味は、理解できる。
 あきが死んだら、あきのことを忘れて、歩いていけってことだ。

 実際、何度も言われた。
 もう忘れなさいって。TAKIは死んだんだからって。

 だけど、忘れることなんて出来るわけがなかった。

 私にとって、唯一無二の最愛の人。
 大勢のファンにとってはTAKIだったかもしれないけど、私の前では私だけのあきだった。

 TAKIなんて人は知らない。私が知ってるのはあき。

 音楽が好きで、病に冒されてもなお、歌を歌いたいと願っていた。