桔平は希奈子を手招きした。
桔平は希奈子の耳元で「あまり佐久間に心配かけちゃいけないよ。あとロリコンの疑いがあるから気をつけてね」と耳打ちした。
佐久間にはまったく聞こえない。
希奈子は笑った。
「お巡りさんの目は節穴っすか?私、こうみえて20歳っすよ。」
桔平は、希奈子の笑顔を見て素直にかわいいと思った。口の悪さ、態度は別として。
「おじゃましました」桔平は去っていた。



プルルルル…ガチャ
「何でも屋の視察終了しました。男1人、女1人のみのようです。実力は不明ですが、まぁ何とかなるでしょう。以上」
桔平は携帯をポケットにしまった。



「おい、さっき何を耳打ちされたんだ」
希奈子はTVを観ていたが佐久間の方を振り返る。
「えーっと。佐久間さんはロリコンの疑いがあるから気を付けろ。だそうっす。誰がロリだっつーの、あのポリ公」佐久間に心配をかけるな。という忠告はあえて言わなかった。
佐久間は鼻で笑い、読みかけの新聞を手に取った。
希奈子もTVに視線を戻す。
「佐久間さん、あの人は一体なんなんすか?」



佐久間が始めて桔平に会ったのは高1の時、佐久間の後ろの席に桔平はいた。
昔から口数の少ない佐久間は友達を作ろうという気はなく過ごしていた。
そんな中、桔平はことあることに佐久間に話し掛けてきた。
「お前、すごいカッコイイ顔してるな!」
「は?」
これが始めての会話である。
クラス替えをしてクラスが別になっても桔平は昼休みになると弁当箱を持って現れる。
初めは面倒で逃げていたが、桔平は佐久間を必ず見つけ出した。
「お前さ、俺と弁当食べたりして楽しいわけ?」佐久間は聞いた。
「そりゃ楽しいさ。そうじゃなきゃ探しだしたりしないよ」桔平は口をもぐもぐさせながら笑った。
「佐久間は頭も良いし、運動神経も良い。おまけに顔も良いときた。こりゃ飽きないさ」
「桔平‥残念だけど、俺はそっちの趣味はない」
引いた目で佐久間は桔平を見る。
「ハッハハハ。本当に佐久間は面白い」



「ようするに、高校時代の友達ってわけですね」
希奈子は言った。
「まあ、そういうことにしておくか。まさか警察官になってるとは思わなかったな」