「女に銃口を向けるなんて、相変わらず容赦ないわね」
佐久間は銃口を下ろし、ｿﾌｧへ座った。ひとつため息をつき「女とは良く言ったもんだ。女装が趣味なんてそれこそ初耳だぞ。何しに来たんだ、桔平」

＊

「さすが佐久間。女装とは失礼だな、完璧な変装と言って欲しい。そして風呂も貸して欲しい。」きっと化粧やら何やらを落とすつもりだろう。
佐久間は桔平を風呂場に案内した。
残された希奈子は、ｸﾗｯｶｰの残骸を片付けるべく掃除を始めた。

＊

数分後、目の前に現れたのは美女ではなく、短髪の男だ。
「美人だけど、どこか変だと思ったんすよ。まさか男だったとは‥ｷﾚｲなお姉さんには興味あるけど、ｵｯｻﾝには興味ない」希奈子は言った。
「ｵｯｻﾝとは失礼だな。こう見えて佐久間と同い年だよ」
「だとよ、佐久間さん。はやく説明して下さい」
「だってよ、佐久間。この子はお前の妹かい？」
佐久間は頭が痛くなりそうだった。頼むから質問は1人ずつにしてくれ。

＊

とりあえず、佐久間が出したお茶とｺｺｱで2人は落ち着いた。
「お前は俺に何か用か？」佐久間はお茶をすすっている桔平に尋ねる。
「えーと。特に用はないけど、この変装がどこまで通用するかな？って思って。佐久間にﾊﾞﾚるのは想定内だけど、あそこまで時間を稼げれば成功さ。あと、今の佐久間の暮らしに興味があった。以上」何か質問はあるかい？と桔平は言った。
質問どころか理解出来ない点が多すぎる。
とりあえず落ち着け、俺。