「佐久間さん、実はこの桜気に入ってるんすね」
ﾆﾔﾘと笑う希奈子。
ｼｮｰﾄﾍｱで色白。いつも顔色が悪い為、唇の赤さが際立つ。
「ちげーよ、このｺｯﾌﾟが気に入ってんだ」
「またまた～。で、このたい焼きは？」高田の婆さんに貰ったたい焼きを指さす。
「高田の婆さんに貰ったんだよ、お前に会いたがってたぞ」
「へぇー。食べて良いっすか？」既にたい焼きは希奈子の口元だ。

＊

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ
夕食を終えTVを観ているとｲﾝﾀｰﾎﾝが鳴った。こんな時間に客か？と思いながらも佐久間は玄関へ向う。
扉の向こうに立って居たのは若い女だ。

＊

事務所もといﾘﾋﾞﾝｸﾞに現れた美女。
「なんたら、ｷﾚｲな人っすなー」希奈子は驚いた。
さりげなく美女の隣に座ろうとする希奈子を手招きする佐久間。ﾁｯと舌打ちをし希奈子は佐久間の隣に座る。
「で、ご依頼は？」
女は何も言わない。妙な空気が漂うなか女は口を開いた。
「佐久間、妹が居るなんて私初耳よ」
佐久間は驚いた。何故、俺の名前を知っているのだ。

＊

「妹とは、失礼しちゃいますな。」希奈子は言う。確かに他人から見れば兄妹に見えるかもしれない。しかし佐久間と希奈子は赤の他人であって家族ではない。それが事実だ。
「お前は誰だ、何故、俺の名前を知っている」
「あら、私の事覚えてないの？」
そう言いながら女はｶﾊﾞﾝの中から何かを取り出そうとする。次の瞬間、
ﾊﾟｧｰﾝ
空気の弾ける音と共に、火薬の匂いがした。
同時に佐久間は、女の頭に銃口を向け立っている。
「なんのつもりだ」鬼のような形相で佐久間は問う。
「そうっすよ、これ誰が片付けると思ってんすか。」と希奈子は床に散らばったｸﾗｯｶｰの紙くずを見ている。
佐久間は気がついた。
近くで見る女の顔はどこか違和感がある。よく見ると手や髪もそうだ。
女がこっちを見てﾆﾔﾘと笑う。