彼女に会ったのは六年前。
高校を卒業して今の会社に
入社してすぐのことだった。




「 望月くん、っていうのは
  貴方で合ってる? 」




進学のことしか頭になかった俺に
奏多が就職を勧めてきたのは
高二の冬。




正直、後悔している。




「 はい、望月です 」


「 新入社員の中でも貴方は異様だって
  すご~く注目されてるわよ? 」


「 ・・・そうなんですか 」




”異様”にも色々意味があるだろうし、
そのことについて深くは考えなかった。




それよりも俺は、彼女が手にしている
大量の資料のようなものに目がいって
早く仕事に戻ろうと、適当に
話を済まそうとしていた。




「 城嶋[ジョウシマ]よ。
  これからよろしくね 」




上司にそう言われて、無視できる
わけもなく手を差し出すと
ドサッ、と彼女が持っていた資料を
持たされた。