差し出したリングケースは
白いテーブルクロスの上に
置かれて、目の前に戻ってきた。




「 ・・・愛じゃ、ないよ 」




それ以外に言葉が見つからない。
そんな顔をして、彼女は俺の
前から姿を消した。




ケースを掴んで、そのとき
初めて気付いた。










────────────何で、追わないんだ。







追いかけて、手を掴んで、
もう一度理由を聞いて、
納得するまで普通なら
話し合うところだろう。







そう思いながらも、
俺の体は動かなかった。