お互い仕事があったため、
会ったのは少し遅い時間だった。
いつもは行きつけのバーで飲んで
他愛のない話をして別れる。
忙しくてなかなか会えない俺達は
毎月一度は会うようにしていた。
よく考えれば、その時点で
冷めているようにも感じられた。
「 ・・・悠也、後悔するよ 」
高級レストランの店内は静かだ。
お互いドレスアップして、
ただでさえ綺麗な彼女は
更に綺麗になって目の前に座っている。
サイドで一つに束ねられた髪が
揺れて、彼女は視線を落とした。
「 悠也の”それ”は、愛じゃないよ 」
”結婚してください”
ベタで一番つまらないプロポーズだと
自分自身よく分かっていた。
だからきっと、彼女は笑って指輪を
受け取ってくれるんだろうと
当たり前のように予想していた。

