「 ・・・あの男が好きなのか? 」 「 ・・・慧は? 」 「 ・・・俺は・・ 」 鼻を掠める香水も、 携帯から聞こえたあの声も、 「 慧は、もうずっとあの子が 好きだったんでしょう? 」 慧でいっぱいだった頭は 一瞬にして彼でいっぱいになった。 慧を責める権利はあたしにはない。 「 ・・・ごめん 」 だけど、改めて謝られてしまうと 気のせいじゃなかったんだ、と ジワジワと目を逸らしてきた現実が 見え始めて、 「 ・・・慧が、好きだった 」 かき消すように、気持ちを吐き出した。