君が恋に落ちるまで。





その瞬間、あたしの動きが止まって
それを見た奏多さんが小さく笑って
手を伸ばしてきた。




髪を梳くように撫でられて
何度か繰り返したあと、
その手は頬へ添えられた。




「 ”悪いと思ってる” 」


「 ・・・・っ 」


「 ”大人なんかじゃない。
   俺はそんな立派なものじゃない” 」




あたしの目の前に居るのは
奏多さんだ。




悠也さんじゃない。
髪の色も、その声も、
話し方も、全て違う。




それでも、今目の前に
悠也さんが居た気がした。




楽しそうに目を細めるのは
奏多さんで、だけどあたしに
触れている手は悠也さん。




そう思ってしまうくらい、
その手は優しく、温かかった。