だから、笑わないで。





憂の大好きなラーメン、焼きうどん、海老フライ、クリームコロッケ、パスタにサラダ、オムライス。


他にも数えきれないくらいの料理が並んでいる。


「…………おばさん……どうして…」
「え?」
「………こんなに料理……これぜんぶひとりで食べるつもりなの…」



リンははしをおいた。
いくらなんでも食べきれない。



「…………現実みなきゃ…だめだよ…憂だって退院してくるんだし」




リンは口をぎゅっと結んだ。
こんなこと言いたくはない。
だけど憂が帰ってきたときに、こんな状態では困るのだ。



「…………わかってるわ…」
「…………でも、美味しい。いっぱい食べるね」
「………………………」



リンはなるべく残さないよう、できる限り胃に詰め込んだ。
だが、やはりすべては食べきれない。




「おばさん、残ったぶん夕ごはん食べてっていい?」
「…………………」
「………………おばさん?」
「…………リンくん…」
「え?」
「…………憂はね、言ったのよ。レンくんと憂が付き合ったのは三年前。付き合ってすぐ、リンくんが笑ってくれなくなったって」



リンはその事実を知って唇を噛んだ。
憂を心配させてしまったことを申し訳ないと思った。



「…………わたしはなんとなくわかった…リンくんの気持ち…でも言わなかった。リンくんには悪いと思ったけど娘が幸せそうだったから」
「………………………………」
「…………でも、憂は言ったのよ……レンくんと付き合わなければよかったって」
「………………え?」




じぶんの耳を疑ったリン。
憂の母親は続ける。



「こんなふうになるなら、付き合わなければよかったって…言ってたわ…憂はふたりが笑ってくれれば、誰とも付き合わなくてもいいといってた」
「………………………」
「……わたし…とめればよかったのよ…あのとき…!まだ、憂がレンくんを好きじゃないうちに…別れさせればよかった…!」




憂の母親は泣きながら床をドンドンと叩いた。
でも、リンにはわけが分からない。
なぜレンと憂を別れさせようとする?
レンと憂が付き合うことと、今回の入院は関係ないはすだ。