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あれ以来、涼は私の前に姿を見せなかった。
無理もない。
今度こそ本当に、私は涼を傷付けたのだから。
…だけど、これで良かったんだ、きっと。
私なんかより、涼に合う子はいっぱいいる。
涼の彼女になりたいと思う子は、もっといる。
涼はきっと、小さい頃から近くにいた私を、好きだと勘違いしてるだけ。
女は他にもいっぱいいるんだと知ったら、私のことなんてすぐに忘れる。
きっと、他の子を好きになる。
……そう考えたらやっぱりちょっと寂しいけど、
それはきっと弟が姉離れする時のような気持ちであって、
断じて“恋”などと、特別なものなんかじゃない。
私はそう、自分に言い聞かせた。
日曜日。
結婚式を一週間後に控えた優兄ちゃんとお姉ちゃんが、昼過ぎにうちを訪ねてきた。
「咲、日曜日なのに今起きたのか?」
「うん…」
部屋着のまま寝起きな顔の私を見て、優兄ちゃんは笑った。
「咲は日曜は絶対お昼まで寝てるから」
隣でお姉ちゃんが笑いながら言った。
「仕事、忙しいのか?大丈夫か?」
「大丈夫だよ〜。優兄ちゃん、私の心配はもう良いから、お姉ちゃんのことだけちゃんと見ててね」
「ちょっと咲、言っとくけど私、もう階段から落ちてないから!」
「当たり前でしょ、妊婦がそんなドジしたらシャレにならないよ」
相変わらずなお姉ちゃんに向かって、私は呆れて言った。
優兄ちゃんが夕飯を食べて行くことになり、お母さんとお姉ちゃんはキッチンで支度を始めた。
最近やっと花嫁修行として、お母さんから料理を教わっているお姉ちゃん。
だけど毎回お母さんの怒鳴り声が聞こえて、悪戦苦闘しているようだった。

