「……笑うわけねーだろ」
涼が静かに言った。
私は涙でぼやける瞳で涼を見る。
「…咲が、兄貴のことを想いながら他の男と付き合えるような、
そんな性格じゃないってことくらい知ってる。
おばさんのために頑張ってる咲も、
美菜姉ちゃんのために頑張ってる咲も、
本当は泣きたいくせに、意地でも我慢しようとする不器用な咲も…
そんな咲を、俺はずっと1番近くで見て来たから」
涼が私を見つめた。
その瞳があまりにもまっすぐで、見たこともないくらい真剣だった。
「…俺、咲が好きだよ。
子どもん時からずっと、咲のこと好きだよ」
「……は?
な、何言って……」
涼の突然の言葉に、私の頭の中は一瞬にして真っ白になる。
だけど涼は目をそらすことなく、まっすぐに私を見つめた。
「や、やめてよ…冗談でしょ?
だって涼はまだ高校生で…5こも下で…弟みたいなもので…」
“咲ちゃん”
昔は女の子のように可愛かった涼。
いつも私の後ろを追いかけて、甘えてきた涼。
いつからかそんな甘えることもなくなって、私は寂しくなったのを覚えてる。
中学生になった頃から急に大人びて、いつも冷めた態度になって、
あんなに素直で可愛かったのに、男の子ってそういうものなんだって思った。
今目の前にいる涼は、あの頃の涼の面影なんて全然ない。
….まるで…
「…弟にしか見れない?本当に?
俺、男だよ。
俺は咲のこと、“姉ちゃん”なんて思ったことない。
ずっと、“女”として見てた」
「な、何バカ言って………」
心臓が破裂するかと思った。
“女として見てた”と言う涼に、私は混乱して言葉が出てこなかった。
冗談で言ってるんじゃない。
だからこそ、どうすれば良いかわからない。
そっと涼の腕が、私の肩に触れようと伸びてくる。
「やっ…」
私は思わず、その腕を拒んだ。
そのまま、涼から逃げるように背を向けて走りだした。

