優兄ちゃんが好き。
だから私は、誰とも恋愛しない。
そうやって自分に言い訳して、ずっと目を背けてきた。
……本当は、甘えたい。
しっかりしてるって言われても、私だって本当は甘えたかった。
寄っかかってすがりついて、思いきり、誰かの胸で甘えたいんだ。
だけど“甘えたい”なんて思ってる自分を、認めたくなんかなかった。
「…良い?」
そう言って林田さんは、立ち止まった。
気付いたら辺りは繁華街ではなく、一本通りを奥に入ったラブホテル街。
「行こうか」
林田さんの腕が、ぐいと私の体を抱き寄せた。
中に入れば、きっと私は林田さんとSEXをする。
23年間必死で守ってきたわけではないけれど、私の処女を林田さんに捧げることになるんだ…。
いいんだ。これで。
そしたらきっと、私の気持ちも変わるかもしれない。
優兄ちゃんへの想いを断ち切って、一歩前に進めるかもしれない…。
「大丈夫、優しくするから。ね?」
……だけど……
「あの、ちょ、ちょっと…」
私は足を止めた。
…怖い?
ううん、そうじゃない……
「ここまで来てイヤとかないでしょ。
さ、ほら…」
林田さんが強引に腕を引っ張った。
「痛っ…や!離して!」
私は必死で抵抗した。
だけど林田さんの腕は強くてほどけない。
「ごめんなさい、私やっぱり…」
「咲!!」
その時、いきなり名前を呼ばれて私の心臓は飛び跳ねた。
見ると、涼がすごい剣幕で走り寄って来る。
「何やってんだよ!」
涼が林田さんの腕から私を奪うように剥ぎ取ると、私にではなく林田さんに向かって怒鳴った。
「な、またお前…!
高校生がこんなところで何してんだ」
林田さんも興奮して、涼に向かって言う。
「そんなことどうだって良いだろ!
帰るぞ、咲」
「えっ、ちょ、涼?!」
「待てよ、おい」
林田さんが涼の肩を掴む。
今にも涼に殴りかかりそうな雰囲気で、私は慌てて林田さんを制した。
「ごめんなさい!
…私、嬉しかったです。
林田さんに話聞いてもらえて、少し気持ちスッキリしました。
楽しかったです。ご飯、ご馳走さまでした。
ありがとうございました…」
言ってて泣きそうになるのを、私は必死で堪えた。
「……っ、なんなんだよ」
そう言って林田さんは、背を向けて行ってしまった。
怒らせてしまうのも無理はない。
私が期待させて、ここまでついて来てしまったのだから…。
涼が現れたのは、私も予想外だったけど…

