「ねぇ、高宮さんって…」
林田さんが耳元で、そっと息をかけるように囁いた。
「…もしかして、バージン?」
私は小さく頷いた。
「…23歳にもなって、そんなのおかしいですよね。
優兄ちゃんが好きだったからじゃなくて、きっと私自身に問題があるんです」
今まで、告白されたことがないわけじゃない。
好きだと言われて嬉しくないわけでもない。
だけど、相手の気持ちをどうしても受け止められなかった。
「相手に甘えるとか、自分の全てをさらけ出すのが怖くて…
嫌われるんじゃないかって、そんなことばっかり考えちゃうんです」
「誰だって最初は怖いと思うよ。
でも、飛び込んでみると、本当はすごく良いものかもしれないよ」
そう言って林田さんは、私の肩を優しく抱いた。
酔いが回ってるせいか、ふわふわと気持ちいい。
…あったかい。
甘えるって、こんな感じかなぁ。
林田さん、私がバージンって言っても笑ったりしなかった。
優しく、受け止めてくれた。
林田さんなら私、全てをさらけ出せるかも……
「場所、変えようか」
誘われるがままに、私たちは店を出た。
林田さんはずっと私の体を支えるように、抱き寄せて歩く。
23年間男の人と付き合ったことも、SEXどころかキスだって経験ないことが、
ずっと私のコンプレックスだった。
周りが普通に経験していくのに、私ひとり違う世界を生きているみたいに未知のこと。
恋愛するって、
誰かに甘えるって…
それが出来ない私は、やっぱりどこかおかしいんだ。
私はそんな自分を、
ずっと優兄ちゃんのせいにしてきただけなのかもしれない。

