お姉ちゃんに、おめでとうって…
いつまでも幸せにねって…
優兄ちゃんに、お姉ちゃんをよろしくねって…
本当は、言いたいのに。
私って本当は、こんなにも弱くて、ずるくて、醜い人間だったんだ。
優兄ちゃんが、お姉ちゃんを選ぶのは当たり前だ。
こんな私、優兄ちゃんが好きになってくれるはずないんだから。
「…ったく、いい大人が鼻水垂らして泣いてんなよ。みっともねぇな」
涼が呆れたように言う。
私は慌ててティッシュを掴んで鼻をふいた。
「うっ、うるさい!みっともないってなによ!
だいたいアンタ、高校生のくせに生意気なの!
涼には分からないわよ、私の気持ちなんか」
…そうよ。
この気持ちは、誰にも分かるわけがない。
私が今までどんな想いで優兄ちゃんを見ていたか…
ずっとずっと優兄ちゃんだけを想って、私は今まで…
「……分かんねーよ。咲の気持ちなんか」
「だから、分かるわけないって…」
「お前は昔からそうやって兄貴兄貴って、マジうぜぇんだけど」
「なっ?!う、うざ?!」
涼に向かって怒鳴ろうとした瞬間に、思い立つ。
「…って涼…
あんた、私が優兄ちゃんのこと…気付いてたの?」
「気付いてないとでも思ってたのかよ?」
「………」
私の気持ちが、今までお母さんにもお姉ちゃんにも、優兄ちゃん本人にも、
誰にもバレてない自信はあったのに…
優兄ちゃんは、“お向かいに住む優しいお兄ちゃん”であって、
それ以上の気持ちなんてないって、そう振舞ってきたつもりなのに。
なのに、涼には気付かれてたなんて……。
「…まさか、優兄ちゃんにも…」
「あぁ、兄貴は気付いてないから安心しろよ。ああ見えてかなりにぶいからな。
母さんたちも、“咲は優のこと本当の兄貴みたいに慕ってくれてる”程度だと思ってる」
「………そう」
何だろう。なぜか、心の奥がチクンと痛んだ。

