愛のうた。

私は尚さんの話を聞いて、涙がただただ頬を伝った。


尚さんも、目に涙を溜めている。


「あの時は佳奈絵しか愛せなかった。
佳奈絵が俺の全てだった。

アイツ、沙知ちゃんみたいに小柄で、素直で、・・・。
だから初めて沙知ちゃん見た時、思い出してさ・・・。」


尚さん・・・。


忘れかけてた、忘れようとした記憶は、
ある日突然蘇る。



私もそうだった、そうだったから・・・。





「俺、家族がいないんだ。父さんも母さんも他界してて。
俺は施設で育って、一人暮らしして、ずっと一人だった。

だから、佳奈絵しかいなかったんだ・・・。
佳奈絵が危篤の時、初めて病気の事知って。
なんで教えてくれなかったんだろうって、信用されてなかったのかって。

急に思ってさ・・・。」



私は衝動的に尚さんを抱きしめた。




「佳奈絵さんは尚さんと出会って、すごく幸せだったと思います。
だからこそ・・・言えなかったんだと思います。
幸せを壊したくなくって、尚さんと傍に居たかったから・・・」


尚さんも私を抱きしめる。





「沙知ちゃん・・・ありがとう」


私も尚さんにシュンの事を話した。




シュンとの出会い。

シュンとの思い出。

突然の別れ。




話すのはやっぱ辛かった。

でも、尚さんに知ってほしかった。


たくさん泣いたけど、話し終えたら少しスッキリする。




お互い傷を負ってるもの同士、分かりあえる。


「尚さんに話して、心が少し軽くなりました」

「俺もだよ、ありがとう」




尚さんだから話せて、泣いて、一緒に分かち合える。