「カチャ」その音と供に、サラリーマン風の男がトイレから出て来る。よし、行くか。思うも束の間、「ヤング・マガジン」を読んでいたお兄ちゃんに先を越されてしまった。むむ、俺が先に待っていたのに。スナオさんの胸の奥から、静かに怒りがこみ上げて来た。
 が、しかし、よくよく考えてみれば、そのお兄ちゃんは私が待っていた事を知っていたわけではないのである。だいいち、そのお兄ちゃんはスナオさんよりトイレに近い位置に陣取っていたではないか、順番待ちと言う概念から行けば、スナオさんは、そのお兄ちゃんの後ろに並んでいたことになるではないか。