レンタル彼氏 Ⅱ【完結】

「カバン」

私の目の前に出された、私のカバン。


「あ、ありがと」

一応、お礼を言って手を伸ばす。


が、その手はカバンを掴むことなく宙を舞う。
私のカバンは聖の後ろに回されていた。


「………返して」


「…返す気だったけど、気変わった」


「は?」


「尚子ちゃん、いずちゃん借りてくね?」


何で尚子に断り入れるの?
尚子も頷いてるし!


私はまた、強引に聖に腕を引っ張られて外まで連れていかれた。



…………また、拒否出来なかった。


がっくりしながら聖の背中を見つめる。

「いずちゃんさ、何かしたいことない?」


「は?」


「好きなことしよーよ」


「好きなこと?」


「うん、好きなこと」


「…………それしたらカバン返してくれんの?」


「どうかな?」


「じゃあ、いい」


「えー?」


「………とりあえず財布だけ頂戴」


「財布?」


ぴたりと足を止めると、聖がカバンを漁る。

「………これ?」


にっこりと私の財布を私に差し出した。