そんな、康弘さんを私は泣きそうになりながら見つめる。

刑務所から出た、康弘さんは私を見つめると優しく、ゆっくりと口角を上げた。


「美佳」


「…康弘さん」


「待たせたな」


「…いえ」


私の側まで近付くと、康弘さんは私を抱きしめる。
それから、耳元で囁くように言う。


「…何もかもを捨てて、私と来い」


「…え?」


何もかも?


「過去も、現在も、捨てて私に着いてこい


「………過去、も?」


「沖縄で、いいとこがある。
そこで二人の人生を始めるんだ」


「…………」


何を、迷う必要がある?

康弘さんと共に過ごすためだけに、今まで我慢してきたのに。


「……い、伊織も?」


そう、私がぽろっと言うと。

康弘さんは笑うことなく、真剣な瞳で頷いた。


「…連絡取ったりしたらダメ?」

それにも、ゆっくり頷く。


「……」


「絶対、美佳だけは幸せにしてやる」


…こんな、プロポーズみたいな言葉。