「………泉、好きだよ」



ぼそっと、小さく囁く。

聞こえてないから、泉の反応はない。


それで構わない。



目の前にいる泉に好きだと言えることが、俺は幸せだったから。




泉の匂いに包まれながら、俺も瞳を閉じて夜明けを待った。



今日は嫌な夢も見ないで、ぐっすり眠れるような気がする。


そんな、時間いつぶりだろう。




俺は朝まで一度も起きることなく、熟睡をした。


目覚めたのは、何か音がしたからだった。




「………う…ん」



ゆっくり目をあけると、目の前にいたはずの泉がいない。


ガバッと布団をはいで、俺は起き上がる。

泉…?



部屋を見回すと、すぐにその姿を見つけた。



いなくなったわけじゃなくて、俺は肩を下ろしながら安堵した。




「……泉っ」


台所に立って、何かをしている泉に声をかける。



くるっとこっちを振り向くと、

「おはよっ、伊織」

そうやって眩しいほどの笑顔を見せた。



「何してるの?」


「んー考え中」


「…はあ?」



………何を?