レンタル彼氏 Ⅱ【完結】

「これから伊織の歩く道が明るい道だって、祈ってる」


「…ありがとう」


「さよならは、言わない」


鈴恵さんは俺の両肩をポンポンとしてから、その手を腰に当てる。

いつもの優しい笑顔で。


「伊織、行ってらっしゃい」



いつだって、帰って来ていいって。
暗にそう言っている気がした。


「………っ、行って、きます」


涙を堪えながら、俺はたんぽぽ院に背を向けると一歩一歩前へと踏み出した。



それから入り口の外に置いていたバイクに乗り込んだ。

後ろは振り向かない。




だって、さよならじゃない。

別れを惜しむことはないんだから。




――――――…………



俺はその出来事を思い出しながら、手紙を持って部屋に戻った。


布団の上に座ると、封を開ける。
中に入ってたのは、また、封筒………?


その封筒には【伊織へ】としか書かれていない。
差出人の名前がなかった。



ワケがわからずに、封筒とは別に入っていた便箋を開いた。