レンタル彼氏 Ⅱ【完結】

それを見て俺は目を見張った。



「……それっ……」



続きの言葉が出なかった。


「大切に取っておいたのよ」


「使って…なかったんだ」


「使えるわけないじゃない。
これは伊織が稼いだモノよ。
母親としてはそんなお金使えない」



鈴恵さんの手にあったのは、過去、ここを母親と共に出た時に手渡したモノ。





――――………退職金と言う名の手切れ金。


「稼いで、なんかない」


震えながら言う俺の前まで近付き、鈴恵さんは俺の手を取ってその封筒を握らせた。



くしゃっと、その封筒を握る。

その封筒は、昔のまんまで。
それが俺の涙腺を刺激する。


「どっちにしろ、これは伊織が手にしたお金よ。
いつか、必要になるかと思ってね」


「………………っ」


やっぱり。

俺は鈴恵さんには適わない。


「伊織、お金に綺麗も汚いもないのよ」


「………」


「…寄付をするなら、伊織が胸を張ってしなさい。
それが伊織の為になる」


「…………うん」



鈴恵さんの言葉に頷くことしか出来ない。