聖はゆっくりと私の顔に手を伸ばすと、涙を掬った。


「…好きな女が、彼氏の部屋で肌を露出して寝てたら逃げ出すよ」


「…露出?」


「うん、俺がね、わざと露出させといたの」


ニッコリと笑って言う聖。
聖がした復讐は、完璧だったと思う。


いきなり、和が彼氏だと言って伊織を連れて来るようなものでしょ……?


そんなの、何も言えない。
自分が身を引くしか出来ない。

だって、和を捨てることなんて出来ない。


伊織も、そんな気持ちだったの………?


「俺の復讐は完璧だったよ」

ふふっと、不気味に笑いながら聖はまた虚ろな目線をよこした。


「…でもね、美佳がもういないんだ……」


「……………」


「………美佳は、社長とどっか消えちゃったんだ。
…因果応報、当然だよ」



力なく笑うと、聖は顔を手で覆った。


………私が…誰か救ってやれるかもだなんて…おこがましいことだったのかもしれない。

児童指導員にはきっと。




聖みたく、傷を負った子がわんさかいるんだ。